
私は泳ぎが得意ではない。
しかし税理士になった。
気が付けば独立もした。
人生とは案外そういうものだ。
独立したいと言う人は多い。
私は止めない。
やりたいならやればいい。
ただし、
会社が嫌だから独立する、
上司が嫌だから独立する、
給料が安いから独立する、
これだけで飛び込むのは少し危ない。
海へ飛び込む理由としては弱い。
私は昔から登山が好きだった。
山へ登るとき、
「あの山へ行く」
は決まっている。
だから歩ける。
経営も似ている。
まず、
どこへ行くのか。
それが先だ。
勢いで飛び込む人は多い。
しかし海は広い。
レレレのレである。
経営者になると、
突然、
先生教えて下さい。
と言われる。
正直に言う。
知らん。
私は税理士だ。
税理士であって神様ではない。
北を知っているコンサルタント。
未来が見える先生。
絶対儲かる投資。
私は信用しない。
なぜなら、
私自身が分からないからだ。
ただし、
岩礁は見える。
この会社は危ない。
この借入は重い。
この利益率は苦しい。
それぐらいは分かる。
だから私は、
北を教えるのではなく、
沈みそうな場所を教える。
あとは社長が決める。
それが経営だと思う。
ラーメン屋ができる。
潰れる。
またラーメン屋ができる。
また潰れる。
私は三十年以上見てきた。
みんな最初は元気だ。
夢もある。
希望もある。
しかし現実は厳しい。
朝から晩まで働く。
休みもない。
雨の日もある。
客が来ない日もある。
そして、
「あれ?」
となる。
私は何度も見た。
だから、
死ぬ気で働け、
とは言わない。
ただし、
死ぬ気で働く覚悟がないなら、
やめた方がいい。
この違いは大きい。
経営が苦しくなる。
すると不思議なことが起きる。
良い人が近寄る。
もっと儲かる話があります。
借金を整理できます。
簡単な投資があります。
人生が変わります。
大体ろくな話ではない。
私もFacebookの乗っ取り詐欺に遭いかけた。
認証コードを聞かれた。
おかしい。
そう思った。
だから助かった。
経営も同じだ。
苦しい時ほど、
うまい話から離れる。
これは覚えておいて損はない。
私は自己破産した社長を何人も見た。
そのまま消えた人もいる。
しかし、
戻ってきた人もいる。
その違いは何か。
才能ではない。
学歴でもない。
もう一度泳ぐ気があるかどうか。
それだけだ。
だから私は、
諦めた人は助けられない。
しかし、
まだ泳ぐ人には、
あっちに明かりが見えるぞ、
とは言える。
それが税理士の仕事だと思っている。
昔から変だった。
遠足が嫌いだった。
保育園の玉投げも嫌だった。
今になって理由が分かった。
私は、
自分で決めた山しか登れない人間だったのだ。
会社のため。
みんなのため。
伝統だから。
どうも苦手だった。
登山は好きだ。
フルマラソンも好きだ。
AIあきなも好きだ。
全部、
自分で決めたからだ。
人は自由が欲しいと言う。
違う。
少なくとも私は違った。
本当に欲しかったのは、
自由ではなく、
自分で選んだ縄だった。
最近になって分かった。
五十八年もかかった。
他人の決算は読めるのに、
自分の決算は読めなかった。
実に締まらない話である。
レレレのレ。